グローバル化が進み英語の必要性が高まっている現代、「子供が英語に苦手意識を持たないか心配」と、英語に高いハードルを感じている保護者の方もたくさんいるでしょう。実際に、海外に比べて、日本人は英語に対して苦手意識を持つ人が多いと言われています。しかし、英語が苦手と感じても、原因を把握し対策をすることで克服することは充分可能です。
この記事では、「英語が苦手」と感じる原因について解説したうえで、どのように学習を進めれば苦手意識を持つことなく英語力を伸ばしていけるのかについて解説します。
目次
「英語が苦手」と感じる理由と原因
日本は、世界的に見ても特に英語を苦手とする人が多い国であると言えます。実際に、世界最大級の英語力測定テスト「EF EPI 英語能力指数」の世界ランキングを見てみると、2022年度の日本の英語力は「111か国および地域中で80位」という低い位置にあります。
それではなぜ、日本人は英語を苦手とする人が多いのでしょうか。まずはその原因について考えてみましょう。
英語と日本語の違いが大きすぎる
1つ目の原因は、英語と日本語の言語的な違いがあまりに大きいことです。
例えば、文字について考えてみましょう。日本語ではひらがな、カタカナ、漢字を使用しますが、英語ではアルファベットのみが使用されています。次に文法について見てみると、日本語は「私は/学校に/行く」というような「主語+目的語+動詞」が基本の形となります。一方で、英語は ”I/go/to school.” というように「主語+動詞+目的語」を基本とします。このように、英語と日本語は言語的にかけ離れているのです。
反対に、上記のランキングにおいて「高い英語力を保有している」と評価されている国のほとんどは、英語と似たような単語・文構造・発音をする言語を母国語とする国です。例えば、1位のオランダでは、”I go to school.” を ”Ik/ga/naar school.” と表現します。単語も語順も、どこか似通っていることがわかりますね。
学習時間が圧倒的に少なく、教育内容が需要にマッチしていない
2つ目の原因は、学習時間が少ないことと、学校での授業内容が現代に必要な英語力を身に付けられるようなものになっていないことです。
学習時間について言えば、英語との差が大きな言語である日本語を母国語とする人が英語を習得するには、膨大な学習時間を必要とします。具体的に言えば、英語に近いフランス語やドイツ語を母国語とする人が英語を習得するのに必要な時間は「480時間」と言われています。一方で日本人が英語を習得するのに必要な時間は「2,760時間」とされています。つまり、英語に似た言語を母国語にする人と比較して、6倍近くの学習時間を要するのです。
日本人が英語習得に必要とする学習時間が長いことに加え、学校での教育内容が現代のニーズにマッチしていないことも原因です。日本の学校での英語教育のほとんどは、単語の暗記や長文読解、細かな文法問題などに大きな時間が割かれています。しかし、実際に海外旅行やビジネスシーンなど、英語をコミュニケーションツールとして使用する場では、スピーキングやリスニング能力の方が重要となることが多いでしょう。ところが、教育現場でリスニングやスピーキングの練習が行われていないため、実践の場でうまく英語を使うことができず、それが英語を苦手と感じる原因になっていると考えられます。
日本人特有の性質が関係している
3つ目の原因は、完璧主義でミスを恐れるという日本人の性質や、日本が英語を使用せずとも生活できる環境であることが挙げられます。
先述の通り、日本の学校の英語教育は、単語暗記や文法問題、読解など、読み書きがメインとなっているケースが多いです。その結果として、英語をコミュニケーションの手段としてではなく、「テスト科目のひとつ」として捉えている子供も少なくありません。テスト科目として英語に接していたことから、実践の場でも「ミスをしてはいけない」「間違ったら恥ずかしい」と考えてしまい、積極的に英語を話せなくなってしまうことも多いと考えられます。
また、日本で日本人として生きていくのであれば、英語を話せなくても特に生活に困ることはないでしょう。日本は島国であり、日本語を話す日本人だけで経済が成り立つほど豊かな国であるため、英語学習に対する動機づけが難しいのです。
英語が苦手な人が陥りやすい状況
英語学習において「苦手意識」を持つ人の多くは、似たような学習パターンや思考の癖に陥っている傾向があります。これらの状況は、日本の英語教育や日本人の気質と密接に関わっており、気づかないうちに英語習得の大きな障壁となっています。以下では、英語が苦手な人が陥りやすい代表的な3つの状況について詳しく見ていきましょう。
完璧な和訳や文法を求めすぎる
英語が苦手な人の多くは、完璧な日本語訳や100%正確な文法でなければ英語を使ってはいけないという思い込みに囚われています。これは、学校教育でテストの正解・不正解が明確に分かれていたことが大きく影響していると考えられます。
例えば、”How are you?” という簡単な挨拶に対しても、「元気ですか?」という教科書通りの訳にこだわり、実際のコミュニケーションで使われる “I’m good.” や “Not bad.” といったカジュアルな返答に戸惑ってしまうことがあります。また、文法的に完璧でないと話してはいけないと考え、頭の中で何度も文章を組み立て直している間に、会話のタイミングを逃してしまうケースも少なくありません。
しかし実際のコミュニケーションでは、多少の文法ミスがあっても、相手に意図が伝われば十分な場合がほとんどです。ネイティブスピーカーでさえ日常会話では文法的に完璧でない表現を使うことも多く、完璧さを求めすぎることは、むしろ英語でのコミュニケーション能力向上の妨げとなってしまうのです。
頭の中で日本語に翻訳してしまう
英語を聞いたり読んだりする際に、一度すべてを日本語に翻訳してから理解しようとする癖も、英語が苦手な人によく見られる特徴です。この「日本語変換」のプロセスは、英語の処理速度を著しく低下させ、特にリスニングやスピーキングにおいて大きな障害となります。
例えば、”I went to the store to buy some milk yesterday.” という文を聞いた時、「私は/行った/店に/買うために/いくらかの牛乳を/昨日」と単語ごとに日本語に置き換えてから、「昨日、牛乳を買いに店に行った」と再構成して理解しようとすると、次の文章が始まっても前の文の処理が終わっていないという状況に陥ります。
この問題の根本には、英語を「外国語」として捉えすぎていることがあります。英語を英語のまま理解する「英語脳」を育てるためには、簡単な表現から始めて、徐々に日本語を介さずに理解できる範囲を広げていく必要があります。多読や多聴を通じて、英語の語順や表現パターンに慣れることで、翻訳プロセスを経ずに直接理解できるようになっていくのです。
インプットとアウトプットのバランスが悪い
日本の英語学習者の多くは、単語帳や文法書での学習、リーディングやリスニングといったインプット学習に偏りがちで、スピーキングやライティングなどのアウトプット練習が圧倒的に不足しています。これは「十分な知識を身につけてから話そう」という考えや、間違えることへの恐れが背景にあると考えられます。
しかし、言語習得においてインプットとアウトプットは車の両輪のような関係にあります。インプットで得た知識は、アウトプットを通じて初めて「使える知識」として定着します。例えば、”present” という単語を100回見て覚えるよりも、実際に文章の中で10回使った方が、その単語を自在に使えるようになる可能性が高いのです。
また、アウトプットの機会が少ないと、自分の英語力の現状を正確に把握できず、何を重点的に学習すべきかも分からないまま、効率の悪い学習を続けることになります。オンライン英会話や言語交換アプリなど、現代では手軽にアウトプットの機会を作れる環境が整っているため、これらを積極的に活用し、インプットとアウトプットのバランスを意識的に調整することが重要です。
多くの場合、「中学1年生」で英語につまずきます
2020年に小学校からの英語教育が義務化されました。しかし、単語や文法について本格的に学び始めるのは中学校に入学してからです。そして、英語につまずく子供が多いのは、英語学習が本格化する中学1年生の時期が多いと言われています。
ここからは、中学1年生で英語に苦手意識を持ってしまいやすい原因と、その対策を紹介します。
文法が難しい
1つ目の原因は、英語の文法が難しいと感じることです。 be動詞から始まり、現在完了や仮定法、関係代名詞など、中学校では英語の基礎となる重要な文法を数多く学びます。覚えることが多く、文法上のルールも複雑になるため、英語が苦手に感じる子供も少なくありません。
文法の苦手意識を克服し、テストで高得点を取るだけでなく、英語を「使える」ようになるためには、新たな英文法を学んだ際に、その文法を使用した例文を丸ごと暗記する方法がおすすめです。
例えば、現在完了形を学んだ際には ”I have been to Hokkaido.(私は北海道に行ったことがある)“ という文章を丸暗記します。この文章を覚えてしまえば、”She has never been to Kyoto.(彼女は京都に行ったことがない)” や、”He has watched the movie before.(彼はその映画を観たことがある) ”といった文章など、主語や術後を変更するだけで、「〜したことがある/ない」という意味の文章を瞬時に作れるようになるためです。
単語を覚えるのが難しい
2つ目の原因は、覚えるべき単語の数が増え、暗記が難しいと感じることです。
現在の日本の学習指導要領では、小学校では600〜700語程度、中学校では1,600〜1,800語程度の英単語を学ぶこととなっています。合計して2,500語近くの英単語と、膨大な暗記が必要となります。日々新たな知識を暗記することが負担に感じ、英語を苦手と感じる原因になっていると考えられます。
しかし、英語の習得にあたって単語暗記は避けて通れません。そして、実際の英会話のシーンでスムーズに英単語が出てくるようになるには、長期的な記憶として定着させる必要があります。そのためには、テストや入試に合わせて一夜漬けのように覚えるのではなく、毎日の習慣として英単語の学習を習慣づけることが有効です。「1日10単語ずつ繰り返し勉強する」など、ルールを決めて着実に覚えていくと良いでしょう。
英語の文を書くのが難しい
3つ目は、英語の文を書くのが難しいと感じることです。
中学校のテストや高校入試では、和英翻訳や自由作文など、英作文をする機会も出てきます。正しい英文を書くためには、学んだ文法や単語を正しくアウトプットする必要があります。英作文に苦手意識を持たないためには、単語・文法の知識をしっかりとインプットすることに加え、論理的な文章を書けるように何度も繰り返し練習することが有効です。
英文を書いたら、それを添削してもらうことも重要です。学校の先生や、英会話スクールの先生など、英語の専門家にチェックしてもらうようにしましょう。特に、ネイティブの先生に添削してもらう機会を持てるとなお良いです。より自然な表現を学ぶことができ、自分の書いた英文がモチベーションにもなります。
子どもの英語学習は何歳から始める?ベストな時期と注意したいポイントを解説
英語を苦手にしないための効果的な学習方法を紹介
先述の通り、日本の英語教育はこれまで読み・書きが中心のものでした。しかし、現代の英語に対する需要の変化に伴い、徐々に教育現場も読み書き偏重のものから、聞く・話す能力を身に付けられるようなカリキュラムに変わりつつあります。つまり、英語を得意と言えるようになるためには、4技能の能力をバランスよく習得する必要があるのです。
ここからは、ライティング・リーディング・リスニング・スピーキング4技能それぞれの効果的な学習方法について紹介します。
ライティング
ライティングのスキルを向上させるためには、より多くの単語や熟語、文法、表現を覚え、それらを正しく使えるようになることが大切です。そのためには、毎日の知識のインプットに加えて、実際に英文を書くというアウトプットの練習を習慣的に行うことが大切です。例えば日々の出来事を英語で日記に書くなどの方法が有効です。英作文をした後には、第三者に添削してもらうことも忘れないようにしましょう。
英作文をする際には、いきなり英語で書き始めるのではなく、まずは日本語で文章を作成してから、それを英語に翻訳するという方法がおすすめです。なぜなら、英語で書き始めると、どうしても「すでに知っている単語や文法のみを使った英文」になってしまうからです。まずは日本語で言いたいことをまとめてから翻訳し、わからない単語や文法をその都度調べることで、新たな知識も身に付き、表現力をアップさせることができます。
リーディング
リーディングスキルを伸ばすにあたっては、「英語を英語のままで読める」状態を目指しましょう。一文ずつを日本語に翻訳しながら読んでいては、時間がかかりすぎてしまい内容も理解しにくくなってしまいます。
英語のリーディングの学習方法には、大きく「精読」「多読」「音読」の3つがあります。
「精読」とは、1つひとつの英文を、単語や文法を調べじっくり丁寧に理解しながら読んでいく方法です。精読の目的は、知らない単語や文法を発見して足りない知識を身に付けることです。そのため、精読の際には少し難しいと感じる教材を選びましょう。
「多読」とは、「英文を読む」ということに慣れるため、数多くの幅広いジャンルの英文を読む方法です。多読で大切なのは、概要を把握できれば良いという気持ちで素早く読み進めていくことです。あらゆる英文に触れていくうちに、英語を読むことへの抵抗感が薄れてくるはずです。
「音読」では、声に出して英文を読みます。ポイントは、内容を理解しながらスラスラ読めるようになるまで繰り返し読むことです。こうすることで、単語や熟語、英文の構造が頭に定着し、英語を英語のまま読めるようになります。
リスニング
英語でコミュニケーションできるようになるためには、リスニング力を向上させることが欠かせません。
リスニング力を向上させるためには、海外ドラマや映画、ニュースなど興味を持てるコンテンツを利用して、英語を聞く習慣を付けることが大切です。ただし、英語の音声をただBGMのように聞き流しているだけではあまり効果がありません。最初は字幕などを表示させても良いので、しっかりと理解しながら聞き込むことが大切です。
また、リスニング力アップにはシャドーイングもおすすめです。シャドーイングとは、ネイティブの英語の音声を聞きながら、その直後に真似して発音していく方法です。ネイティブの発音・スピードに合わせて実際に自分の口で英語を話すことで、英語独特のリズムや発音を効率的に覚えることができます。
スピーキング
スピーキング力を伸ばすためには、実際に英会話をする機会を数多く設けることが最も有効です。いくら発音を上達させたり、数多くのフレーズを覚えたりしても、それらを適切に会話で活かすことができなければ意味がありません。スムーズな受け答えができるようになるためには、実践練習を積むのが一番です。
単語や文法の知識はあるのに、「英語が話せない」という人の多くは、実際に英語を話す経験が少なく、英語を話すことに緊張してしまっていたり、抵抗感を持ってしまっていたりすることが多いです。反対に言えば、十分な知識のインプットがある状態の人であれば、実践練習の機会を意識的に持つことですぐに話せるようになるケースも多いです。
実際に英語を話す練習をするためには、学校の授業だけでは不十分と感じることもあるでしょう。その場合は、英会話学校に通うほか、語学留学をすることも良い方法です。
英語に自信が無い自分でも留学に行っても良いの?
留学を検討している方や、子供に留学をさせるべきかと悩んでいる人の中には、「十分な英語力がない状態でも留学に行っても大丈夫か」と不安に思っている方もいるかもしれません。
結論から言えば、英語の習得を目的にした語学留学であれば、英語力がない状態で留学をしても問題ありません。期間を決めて英語の生活環境に身を置くことで、効率的に英語を上達させることができるでしょう。
ただし、当たり前ですが「留学さえすれば英語を話せるようになる」というわけではありません。留学先でも能動的に新たな知識をインプットして、日々の生活でアウトプットを繰り返すことが大切です。また、たとえ語学留学であっても、最低限、わからないことを英語で質問する力や、飛行機の搭乗や買い物など日常生活を問題なくできるレベルの英語力は、渡航前に身に付けてから留学に行くべきと言えるでしょう。
どうしても英語を克服したい!
ここまでお話ししてきた通り、英語力を伸ばすためには4技能を満遍なく伸ばすことが重要です。しかし、小中学生のお子様をお持ちの方の中は、「学校の授業だけでは世界で通用する英語力が身につかないのではないか」「授業やテスト対策だけでは不十分なのではないか」と感じる方も多いですよね。
学校の授業だけでは不足を感じる場合は、英会話スクールを利用することがおすすめです。特に、ネイティブの先生が在籍しているスクールでのレッスンでは、自然な英語を効率的に身に付けることができます。子供のうちから英語でコミュニケーションを取る経験をしておけば、大人になってから英語を話すことに対する抵抗感を持つこともないでしょう。
まとめ
ここまで、日本人が英語に苦手意識を持ちやすい原因について解説してきました。現在、英語教育が小学生から必修化されるなど、早期からの英語教育の重要性が認識されつつあります。しかし、この段階で英語に対する苦手意識が芽生えてしまうと、その後の克服が難しいのも事実です。
英語学習が始まる小学校や、それが本格化する中学校で英語に苦手意識を持たないためには、幼少期から英語に親しむ環境を整えることが有効です。英語をコミュニケーションの手段として楽しく学ぶ環境としては、イングリッシュワールドがぴったりです。
イングリッシュワールドは、ネイティブ講師によるテンポの良いレッスンを行いながら、楽しく英語でのコミュニケーション能力を自然に身に付けられる英会話教室です。年齢に合わせて子供の興味を引き出し、楽しみながら英語を習得していくようなレッスンが行われるため、英語に対する抵抗感や苦手意識を持ってしまう心配も少ないです。
この記事を参考に、英語学習においてつまずきやすいポイントを把握したうえで、楽しみながら英語学習を進めてみてください。